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Moonshade / Sun Dethroned : ポルトガルの新星メロデスバンド

Moonshade Sun Dethroned

 

ポルトガル出身の5人組メロディック・デス・メタルバンド『Moonshade』  活動を開始したのは2010年だが、今作『Sun Dethroned』が初のアルバムになる。モダンで北欧的なアートワークが印象的。アゼルバイジャン共和国というドマイナーなメタル後進国から、突如その姿を現した『Silence Lies Fear』しかり、思いもよらない国から新星がデビューすることは往々にしてある。

 

作品情報

リリース日:2018年 10月 26日

レーベル: アート・ゲイツ・レコード

レングス:46分07秒

ジャンル: メロディック・デス・メタル

ソングリスト
  1. God of Nothingness
  2. The Flames that Forged Us
  3. Lenore
  4. Sun Dethroned
  5. Upon Your Ashes
  6. World Torn Asunder
  7. Eventide
  8. A Dreamless Slumber

 

『Insomnium』に影響を受けたと公言しているサウンドは、たしかに北欧メロデスへのリスペクトが感じられる。全体を通して聴いた印象は『Insomnium』なのだが、彼らと比べると『Moonshade』の方が、より攻撃的な感じがする。アグレッシブ一辺倒ではない感傷的なギターリフは、多彩に変化し様々な表情を見せる。マンネリに陥ることなく、全曲が様々なペーソスを奏であげる。

 

1.God of Nothingness

弦楽器と女性ヴォーカルを用いたエピックなイントロ。荘厳な趣が漂い、それを打ち破るかのようにギターリフが出現する。リカルドの力強いデスボイスが、『Sun Dethroned』の開始を告げる。芯のしっかりとした太めのデスボイスが、野性的な荒々しさを醸し出す。1段階高くなると『Black Dahlia Murder』のような、悲痛さをたたえた叫びに変わる変幻自在なヴォーカルだ。暴虐と美の織りなす、シックな質感を伴った混沌————これぞメロデス。暴力性と美の極致。間奏に入ると、アコースティックなギターの音色が支配する美しい空間が表れる。曲の長さを活かした映画的な構成の一曲。オープニングにして、オススメの一曲だ。

 

2.The Flames that Forged Us

ヴァイキング風のイントロ。棍棒を引きずりながら、巨人(トロール)が歩むかのように加速と減速を繰り返す、リズムの落差が心地いい。飛び跳ねては減速し、再び加速してまた落とす。曲間のギターソロに入る直前で、儚げなヴォーカルの途切れる瞬間が何とも美しい。まるで、たなびく紫煙が風にさらわれて虚空へ消え行くかのようだ。繰り返しながらも飽きの来ない、グラインドするギターリフが光る一曲。

 

3.Lenore

ウィスパーボイスのヴォーカルが、静謐な霧の中を想起させるイントロ。そして、一気に転調して快活に叫ぶヴォーカル。まるで、視界を覆う霧を野生的なシャウトが一瞬にしてかき消したかのような、開放感を感じさせるドラマティックなオープニング。バックで堅実にビートを刻み続けるドラムス。そんなドラムにオーバーラップする幻想的なヴォーカル。陰ながら重低音を奏で続けるベース。これらが濃厚に絡み合い、重厚な世界観を築き上げる。

 

4.Sun Dethroned

北欧的な哀愁漂うギターリフに乗って絶叫するヴォーカル。その様は、普段は穏やかな紳士が怒り心頭に発して荒れ狂っているかのよう。この曲は、そんなアンビバレントな表情を備えている。醜と美————この相反する二項対立こそメロデスの真髄だ。こういう心を掻きむしられるような切ないギターリフを聴くと、「夢の中で見た景色」「ここではないどこか」に迷い込んだような感覚に陥る。

 

5.Upon Your Ashes

前曲の系統を継いだ一曲。メロディーは違えども、前曲と同様にペーソスをばら撒くギターリフ。先曲の切なさはそのままに、アグレッシブさを増したややハイトーンなヴォーカルが、曲全体に躍動感を与えている。叫んだ時のハイトーン・デスボイス。通常時の芯が据わった力強いデスボイス。やや低めの『Amon Amarth』然とした、バイタリティーが迸るデスボイス。どの音程でも決して崩れないリカルドのヴォーカルは完全無欠だ。メロデス界の『ロブ・ハルフォード』がニクラス・スンディン(Dark Tranquility)だとすれば、リカルドはメロデス界ラルフ・シーパース(Primal Fear)だ。

 

6.World Torn Asunder

終末的で退廃的なギターリフで始まるオープニング。ドラムとベースの重低音が轟き、そこへ絶叫トーンのヴォーカルがジャムリング。転調して一挙に加速する中盤は、さながら雷雲の中を突進する飛行船のよう。

 

7.Eventide

ヴァイオリンの音色を伴ったエピックなイントロ。そんな静的なイントロと対をなすように、サビではテンションが跳ね上がる。曲のテンションも跳ね上がるが、聴いていた私のテンションは天井を突き破らん勢いで上がった。

 

8.A Dreamless Slumber

1曲目とシンメトリーをなすかのような構成の一曲。メランコリーなイントロ。4曲目と同じく、うねりながら進むメロディアスなギターリフ。終盤のクライマックスはピアノと多重コーラスによる『Omnium Gatherum』的な展開を見せる。曲の長さを感じさせない構成力の光る一曲。

おすすめ度 